学生時代、「野菜を食べんばいかんよ」という親の助言もあって、自炊をする時は野菜を買った。ある日、鍋の準備で大根をおろしながら友人が言う。「大根は野菜の王様。何にでも使える」。その時はあまり共感しなかったが、だんだん、なるほど、と思うようになった。大根おろしや刺し身のつま、漬物など用途は広い。懐も深く、さまざまなうま味を抱き留める。おでんやブリ大根は年をとるほど好きになった◆とはいえ、学生時代に大根を買うことは少なく、よく買ったのはタマネギとピーマン。タマネギは薄く切って炒め、いり卵と合わせれば立派な一品。簡単な炒め物しかできないわが身にとって、当時はタマネギが野菜の王様だった◆子どもの頃の好き嫌いを克服できない人は多いかもしれない。だが、野菜は好き嫌いなく食べた方がよい。厚労省が推奨する野菜の摂取量は１日３５０グラム。意識して食べないと届かない量だ◆２年前に亡くなった女性の指輪が伊万里市のタマネギ畑で見つかり、夫に手渡されたという記事が、一昨日の本紙にあった。守ってくれたのだろう。「なんて優しい。やはり野菜の王様だ」と感じ入る◆穏やかな晴天が多かったこの秋、野菜の生育は良好のようで家計にも優しい。消費拡大が農家の支えにつながる。それぞれに思い浮かぶ野菜の王様を食べよう。（義）
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