大阪ニュース
2021年7月29日
大阪府は28日、堺市などで栽培されているトウガラシの一品種「堺鷹(たか)の爪」を「なにわの伝統野菜」に認証すると発表した。おおむね100年前から種子を受け継いでいることなどの基準をクリアした。品目の追加は「難波葱(ねぎ)」以来4年ぶり。認証によりPR効果が期待され、生産者は「文化を残したいと思い、淡々と純粋種を守り続けてきた。光を当ててくれたことに感謝したい」と喜びをにじませた。
収穫前の青々としたタカノツメを手に取る辻田さん=堺市中区 |
赤く色付き、収穫を待つタカノツメ。熟期が不ぞろいなのが特徴だ=2020年(辻田さん提供) |
なにわの伝統野菜の認証は2005年に始まった制度で、文献を通じて種子の固有性や来歴が明らかであることなどが条件。これまで吹田慈姑(くわい)や守口大根などが認められ、今回で19品目となる。
■渋い名脇役
「堺鷹の爪」は、長さが3センチ〜4・5センチほどの赤唐辛子。辛口とされる品種「天鷹」(外国産)の約3倍の辛味があり、一味や七味の材料にもなり、うどんや漬物、すき焼きに風味を添える渋い名脇役だ。
“純系”を継承してきた和風香辛料の老舗「やまつ辻田」(堺市中区)が手掛ける製品は、風味の良さから料亭をはじめ、既に各地の名店でも浸透している。
「『堺市史』続編第1巻」によると、1903(明治36)年には西高野街道に沿う同市福田地区を含む泉北郡一帯で、東京ドーム18個分に相当する85ヘクタールで栽培、158トンの収量があり、秋の収穫期は周辺が「赤いじゅうたん」のようだったと伝わる。江戸時代の蘭学者、平賀源内も著書「蕃椒(ばんしょう)譜」でタカノツメの味、香り、辛味を特筆している。
■絶滅の危機
同社では02(明治35)年の創業以来120年間、自家採種を続けてきた。堺では明治時代に生産が始まったとされるが、房なりにならず一本一本着生する実の付け方や、熟期がふぞろいなため手摘みでは終日作業しても3キロ分ほどにしかならず、「労力に見合わない」と次第に農家が敬遠するように。昭和30年代まで盛んだった栽培は一時、同社1軒のみになった。
曽祖父が創始者で、4代目の辻田浩之社長(59)は「流通している赤唐辛子の99%は外国産。タカノツメは絶滅の危機だった」と解説する。近年は安定供給を保つため、全国の契約農家から全量を買い上げ純粋種を守り育てている。
■有志が一役
辻田さんが手掛けるタカノツメに着目した有志が、農家や料理研究家らでつくる市民団体「鷹の爪純粋種保存会」を結成。普及に乗り出し、勉強会や収穫体験を通じて機運を高めてきた経緯がある。
郷土史家で事務局長の難波りんごさん(66)は「摘み取りは大変な手間だが、こんなに素晴らしいものが大阪で守られてきたことに感動した。さらに名を広げる活動を展開していきたい」と話す。
例年、8月中旬ごろから収穫が始まるが、炎天下での手摘みは重労働。剣道七段の腕前で、道場主でもある辻田さんは「超正攻法で一番美しい“面打ち”をつくり上げていく。これが『日本の香り』だと広く知ってもらえるとうれしい」。食文化を愚直に継承していくつもりだ。
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