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Thursday, January 28, 2021

温かドリップ つながる希望 摂食障害の人たちコーヒー開発 - 中日新聞

kuahbasolah.blogspot.com
からこコーヒーを紹介するメンバーと山口いづみ代表理事(右から3人目)、志賀嘉子社長(右)=金沢市久安のウフフドーナチュで

からこコーヒーを紹介するメンバーと山口いづみ代表理事(右から3人目)、志賀嘉子社長(右)=金沢市久安のウフフドーナチュで

社会参加応援 金沢のNPO企画

 摂食障害の当事者らが来月一日、金沢市で、社会とつながる希望を込めて手掛けた自家焙煎(じかばいせん)コーヒーを発売する。「身体(からだ)にこころが還(かえ)ってくる」−当事者にとって、コーヒーを口にした人々にとって、そうでありたいというコンセプトから「からこcoffee(コーヒー)」と名付けた。 (高橋雪花)

 自助グループであるNPO法人「あかりプロジェクト」(同市)が企画。能力があっても症状のために社会とつながりにくいが、楽しみながら社会参加できるようにと企画した。自らも摂食障害を経験した山口いづみ代表理事(44)ら七人が、二〇一九年末から本格始動した。

 有機栽培のコーヒー豆は、コクのあるペルー産、スパイシーなラオス産、甘い香りのグアテマラ産と三種類を用意した。元々自信がなく、人の輪に入るのを恐れたり、相手にどう思われているかが不安で本音が言えないメンバーも多かったが、互いに意見を出し合ってコンセプトや豆の種類、焙煎の時間などを丁寧に決めていった。ロゴマークには、優しさを表現したしずく形をあしらった。

優しさをイメージしたしずく形がモチーフのからこコーヒー=金沢市久安のウフフドーナチュで

優しさをイメージしたしずく形がモチーフのからこコーヒー=金沢市久安のウフフドーナチュで

 販売場所は、同市久安のドーナツ店「ウフフドーナチュ」。山口さんが、知人で同店を経営する会社「ウフフ」の志賀嘉子社長(37)に持ち掛けた。同店では産後に社会復帰した女性が多く働いており、企画の理念に共感し応じた。

 山口さんは「おいしく香りの良い、五感にフルに働き掛けるコーヒーを目指した。メンバーには、仲間とのコミュニケーションやお客さんとのつながりで『自分はいていい存在なんだ』と感じてほしい」と話す。

 ドーナツに合うよう、コーヒー豆三種類をブレンドしたドリップコーヒーは税込み四百五十円。ブレンドを含む四種類のドリップコーヒーバッグは一袋同百六十二円。ドーナツとドリップバッグのギフトセットもある。

「優しい味と言われたらうれしい」と話す瀬川春香さん

「優しい味と言われたらうれしい」と話す瀬川春香さん

優しさブレンド 届けたい
食べては吐く日々越えて
仲間と仕事「居場所ここに」

 「体重が一グラム増えたら死にたい」。からこコーヒーを手掛けるメンバーの一人、瀬川春香さん(33)はそう思い続けてきた。十六年間にわたる摂食障害。自分の存在価値を認められない中、人よりやせている優越感だけが心の支えになっていた。食べるだけ食べては吐く日々。職には就けず、人からの食事の誘いにも乗れず、孤独を感じていた。

 社会とつながりたいとの思いで、活動に参加した。皆同じつらさを抱える仲間同士。焙煎(ばいせん)やパッケージデザインなど、それぞれ好きな分野に励む皆がキラキラして見えた。そして、自分には皆を手伝うという役割があるのを感じた。「ここには居場所がある」

 「コーヒーを通してやりがいや楽しみ、幸せがある。それが飲んだ人に伝わることで、つながれる」とほほ笑む。「穏やかで優しい気持ちを一緒に感じたい」。その思いがこもった、からこコーヒーは、やはり穏やかで優しい味だ。

【メモ】摂食障害=食行動を中心に問題が起きる精神疾患。極端に食べてしまったり、その後嘔吐(おうと)したり、ほとんど食事しなくなったりする。厚生労働省による2017年の調査によると、総患者数は1万5000人。うつ病など他の心の病を伴うことも多い。低体重や低栄養で、最悪の場合死に至るケースもある。

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