二〇一一年三月三十日、飯舘村内を撮影して回っていた写真家の豊田直巳さん(64)はビニールハウスで作業をする男性を見つけ、近づいた。
「ハウス内だから安全だとは思うんだけどな」
男性は、行者ニンニクや葉ワサビなどを育てる専業農家の菅野隆幸さん(76)。こう言うと、草刈り機のエンジンをかけ、立派に育ったコマツナを刈り始めた。収穫のためではなく、廃棄するためだ。
村には、福島県から露地野菜や原乳の出荷自粛要請のほか、田植えや種まきの延期を求める通知が出ていた。
菅野さんは、事態の推移を見守っていたが、コマツナは出荷するには伸びすぎ、既に箱詰めされた約四十箱とともに廃棄を決めた。
三棟のハウスで作業を終えた菅野さんは「何と言っていいんだか、本当に…。考えようもないことだな」とうつむいた。作付け規模をもっと大きくしようとしていた行者ニンニクなどの畑も高濃度に汚染された。うちひしがれた。
菅野さんは既に三人の孫らは避難させていたが、自分と妻の益枝さん(73)は、地区の班長をしていたこともあって村内に残った。六月に福島市に避難するまでの間、農家としてやった仕事は、ハウスを取り壊すことだった。
こうしたつらい状況は野菜農家だけではなかった。酪農家も、乳牛が病気にならないよう乳搾りは続けなければならない。搾っては捨て、搾っては捨てる日々を強いられていた。
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