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Sunday, November 14, 2021

表情のある野菜育てる300軒の農家、支える挑戦 - 朝日新聞デジタル

kuahbasolah.blogspot.com

環境にやさしい野菜づくりを広める活動が、京都から始まっています。一つ一つ違った「表情」をもつ野菜を届け、農業を始める人たちをサポートしている「坂ノ途中」。2009年に会社を立ち上げた小野邦彦さんに、2回にわたってお話をうかがいます。

本社の1階の出荷場では、農家から集められた野菜がずらりと並んでいます。地域の伝統野菜や西洋野菜など顔ぶれは多様です。かぼちゃだけでも約10種類あり、バラエティー豊かな野菜を詰め合わせ、野菜セットとして宅配しています。

表情のある野菜育てる300軒の農家、支える挑戦
本社の1階が出荷場です

これだけの種類がそろうのは、個性豊かなパートナー農家と提携しているから。元プロボクサーや元研究者、おいしい食材を探しているうちに自ら栽培することを決めた元料理人など、取引する約300軒の農家のうち、約9割は新しく農業を始めた人たちです。サステイナブルな農業に挑戦し、小規模ながらも品質の高い野菜を作っています。

「就農の経緯やそれぞれの営農スタイルなどは本当に人それぞれ。多様さがおもしろいです。あえて共通点をあげるとすると、いつ電話しても畑にいる人が多いことでしょうか。正月なにするんですかって聞いたら、『せっかくやから初日の出を畑で見ようとおもってんねん』と言われることもあります。植物生理や栽培技術について勉強熱心な方が多いですね」

表情のある野菜育てる300軒の農家、支える挑戦
仕分けされた野菜が箱に詰められ出荷されます

作り手によって野菜の個性は出ます。

「野菜には一つ一つ顔つきがあります。やっぱり生き物なので。栽培の仕方や生産者の個性は野菜に表れます。うちで出荷の仕事を始めて数カ月くらいの、それほど経験豊富ではないスタッフでも『この小松菜、たぶん○○さんのやつや』と言い出すぐらい、野菜って本来表情があるんです」

季節によっても味が変わり、同じ野菜はありません。ブレがあります。そんな「野菜のブレ」を楽しむ方法として、野菜セットには毎回お野菜の説明書が入っています。野菜や生産者の名前、おすすめの料理法などを一覧で見ることができます。

表情のある野菜育てる300軒の農家、支える挑戦

「真夏に食べるピーマンは、畑でのどが渇いたらかじるくらいみずみずしい。秋が近づくと、夏のようなジューシーさはないけれど、ゆっくり育つようになって味が濃くなる。さっと炒めるんじゃなくて、じっくり火を通すとすごくおいしいんですよね。僕は夏の終わりの味と言っています。でもそのことを伝えられていないと、『かたくておいしくなくなった』となってしまう。野菜のブレを楽しむには、ちゃんと説明することが必要なんです」

季節の移り変わりも、味わいの違いを生み出します。黒枝豆が茶色っぽく変化し、バターのようなコクが出てきたら、小野さんにとって秋が深まったサイン。まだまだひよっこだったにんじんが、寒波に鍛えられて味わいも増すと、本格的な冬の訪れを感じます。

すべての野菜がもつ個性を伝えるために大切なお野菜の説明書。顧客ひとりひとり、届ける野菜は違うので、それぞれに合った説明書を箱に詰めています。

新規就農者は畑や田の条件に恵まれず、小規模であるため、どうしても生産量は少なく不安定になりがち。農産物流通では、生産量の安定している大規模農家を優先するのが業界の常識。流通企業からは、心配されたり理解されないことが多いといいます。

「少量不安定なものを扱うことは、普通の流通の価値観からは外れているという感覚があって。あほのすることや、と言われたこともあります。週末ボランティアと勘違いされて、『平日は何をしてるの』と聞かれることもあります」

表情のある野菜育てる300軒の農家、支える挑戦

それでも思いは変わることはありませんでした。

「どうやったら環境への負担の小さい農業が広まるか、知りたかったんです。周りを見渡すと、サステイナブルな農業に挑戦したい人はかなり多い。でももったいないことに、実際に就農する人はごくわずか。先輩農家を訪れたり研修に行ったりするなかで、大変な思いをしていることを知って諦めてしまう。その中でも強い思いをもって農業を始めた人も、少量不安定な生産では経営が成り立たないことが多いんですね。販路を構築することが難しくて、近所で安い値段で売ることになりがちです」

「この流通上の課題っていうのは、新規就農した人個人では解決できないんです。ある程度安定的に、継続してまっとうな値段で取引するパートナーがいなければ、環境への負担の小さい農業は広がらない。だったら僕がやってみようという気持ちで始めました」

「坂ノ途中」の社名には、農業を始めようと新しい挑戦の坂を上り始めた農家のよきパートナーに、という思いが込められています。

表情のある野菜育てる300軒の農家、支える挑戦

少量、多品目、不安定な農産物を扱うための効率的な仕組みをつくる一方で、農家やお客さんとのコミュニケーションは欠かせません。野菜の情報交換はもちろん、結婚資金をためている農家の買い取り量を増やす方法を一緒に考えたり、法人化や雇用についての相談に乗ったり、気軽に言い合える関係です。

「ちゃんと売れるかたちをつくる、と意気込んで始めてみたものの、僕たちは何ももってないんですよ。むしろ自分たちが農家さんの品質の高さに甘えてるところはかなりあります。だからこそ、他に役に立てることがあればという思いなんです」

後半では、農業に携わる原点や野菜から学ぶ多様な人の受け入れ方についてお届けします。
(11月下旬公開予定)

表情のある野菜育てる300軒の農家、支える挑戦

PROFILE

小野邦彦

坂ノ途中 代表取締役。1983年奈良県生まれ。京都大学総合人間学部卒。外資系金融機関での修行期間を経て、2009年、株式会社坂ノ途中を設立。「100年先もつづく、農業を」というメッセージを掲げ、農薬や化学肥料不使用で栽培された農産物の販売を行っている。少量不安定な生産でも品質が高ければ適正な価格で販売できる仕組みを構築することで、環境負荷の小さい農業を実践する農業者の増加を目指す。東南アジアの山間地域で高品質なコーヒーを栽培することで森林保全と山間地での所得確保の両立を目指す「海ノ向こうコーヒー」も展開。

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