横須賀市南西部の丘陵に分散する二十カ所、計二万平方メートルの畑で農園「鈴也(すずなり)ファーム」を父・秀幸さん(60)と運営する。黄色やピンク、紫など色鮮やかな野菜を中心に約八十種類ほど栽培し、「レインボー野菜」の名前で飲食店や農協の直売施設に納入。「インスタ映えする」と注目を集め、コロナ禍で始めた産直ネット通販も収益を支える。
「相模湾と東京湾に挟まれたうちの畑の野菜は、潮風で運ばれた海のミネラルが豊富な土で育つからおいしい。塩漬けにならないように頑張るから、甘みが強くなるんです」。収穫した旬の黄色ビーツや紫大根などを前に、笑顔を見せた。
農家の五代目。だが、農業に良いイメージを持てず、継ぐつもりはなかった。畑は手伝わず、大学卒業後は自動車販売店に就職し、輸入車部門を担当した。
仕事にやりがいを感じる一方、家業が嫌いになった理由を自問し、「農業のイメージを変えたい」と二〇一〇年秋に退職。「もうからない」と猛反対する秀幸さんを「消費者の顔が見える農業をしたい」と説得し、「新しい農家に挑戦するなら」と許された。
地域で行われている有機肥料・減農薬の農業を学ぶ傍ら、素材にこだわる飲食店を訪ねてニーズを探った。「自分ならではの特化したものが必要だ」と、色鮮やかな野菜に目を付けた。
「カレーに使われるから需要は多いはず」と考え、黄色や紫の珍しいニンジンの種を畑の一角に植え、収穫すると完売した。野菜の種類を増やすと評判になり、「使ってみたい」「食べてみたい」という飲食店や購入者の輪が広がり、栽培量も着実に増加。就農時、生産の大半を占めた地元特産のキャベツは、一割まで減っている。
一六年、「横須賀から新しい農業を提案しよう」と、それぞれシイタケ農園、食品加工会社を営む友人二人と協力し、株式会社「ヨコスカアグリファミリー」を設立。生産した野菜の加工商品化や収穫のイベントなどを展開するほか、一八年からは横須賀商工会議所の「産農人育成プロジェクト」に加わり、高校生に農業や食品加工を指導する。
「野菜を作って販売し、加工もできる農業には大きな可能性がある。若い人たちに興味を持ってもらい、非農家の就農をサポートしたい。漁業、観光など幅広い分野とも連携し、三浦半島を盛り上げられたら」 (村松権主麿)
<産農人育成プロジェクト> 市場分析や加工商品の開発などができる新時代の農業人育成を目指す。ヨコスカアグリファミリーをつくる2農園と食品加工会社が三浦初声高校(三浦市)都市農業科の実習先となり、生徒らが育てた野菜を使って商品開発をする。4年間で計13人が受講し、卒業生は鈴也ファームや、三浦市農協、沖縄県のマンゴー農園などで働く。食品メーカー「カゴメ」も協力する。
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