山口社長「野菜摂取量は10年間増えていない」
カゴメの山口聡社長は「10年間増えていない野菜摂取量を増やすことは、簡単なことではない」と語る(撮影:今井康一)
「野菜生活」をはじめとする野菜飲料やトマト加工品を販売するカゴメ。事業利益では野菜飲料を含む国内加工食品事業が約9割を占める。2016年に長期ビジョン「トマトの会社から野菜の会社に」を掲げ、野菜飲料だけでなく生鮮食品や冷凍食材など、商品ラインナップの拡充を進めている。コロナ禍において経営課題はどう変化したのか。2020年1月に就任した山口聡社長に聞いた。
食事をする場所が変わった
――就任早々、新型コロナウイルスの感染が広がりました。
大きく変わったことが2つある。まずは、食事をする場所。家庭内で食事をする機会が増え、外食の機会が大きく減った。そのため家庭内で使用されるトマトケチャップやソース類などの調味料は売り上げが増加した。一方で、ホテルやレストラン向けの業務用商品についてはかなり苦戦した。
2つ目は、健康に対する意識が加速した点だ。発酵食品や乳製品、緑黄色野菜を食べようと心がける消費者が増えている。この流れの中、緑黄色野菜も着目されたことで弊社の野菜飲料が非常に好調に推移した。
――2020年は1月から「野菜をとろうキャンペーン」を開始しました。狙いはどこにあったのですか。
背景には日本人の野菜不足がある。厚生労働省は1日350グラムの野菜をとることを推奨しているが、実際の平均摂取量はここ10年、約290グラムで変わっていない。そのため、野菜を「あと60グラム」とるというメッセージを打ち出し、テレビや新聞などで需要喚起している。
われわれの調査結果によると、350グラムという摂取目安を知っている人はわずか16%だった。一方、野菜摂取量については8割の人が足りていると答えた。まずは野菜不足に気づいてもらうため、ベジチェック(センサーに手のひらを当て、皮膚のカロテノイド量を測定し野菜摂取の充足度が測定できる機器)を開発した。だが10年間増えていない野菜摂取量を増やすことは、簡単なことではない。
――市場規模の推移を見ると、野菜飲料全体では前年割れが続いています。
野菜ジュースは「健康になるために飲む飲料」という大きなカテゴリーの中にあり、例えば豆乳やヨーグルトと競合関係にある。少し前には多くの顧客が野菜ジュースから豆乳へ流出し、野菜飲料の市場が伸び悩んだ。流出から流入に変えるためには野菜飲料のバラエティー化を進めなければならない。対応策の1つとして、最近若年女性をターゲットにした、野菜と豆乳を合わせた飲料を発売した。
トマトジュースを飲むのは、血圧が気になる中高年が多い。異なる層に向けた商品をそろえることで、総合的に野菜飲料の市場が再度増加のトレンドに復帰していくだろう。
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