野菜の種や豆からつくる新芽野菜、スプラウト。ビタミンやミネラルが豊富な食材として注目される。岐阜県中津川市に本社を構えるサラダコスモは国内有数の生産者。日本百名山の恵那山を望む栽培工場の一角にあるハウスでは、降り注ぐ日差しを浴び、若草色や緑色の新芽が育っていた。
扱うのは、おなじみのカイワレ大根やエンドウ豆を発芽させた豆苗(とうみょう)、オクラのスプラウトなど八種類に及ぶ。「ブロッコリーやケールの新芽は苦味や辛味などの癖が少なく、食べやすい」と営業部長の川口康三さん(46)。手巻きずしや納豆と食べるのがお勧めという。
化学肥料は使わない。地元の恵那峡でくみ上げた温泉水と、天日乾燥のモンゴルの塩に含まれる天然のミネラルが新芽の栄養分だ。安心して食べられ、健康にもいい野菜づくりの原点は、同じ発芽野菜のモヤシ。前身の中田商店は、清涼飲料水のラムネを製造していた。売れ行きが落ちる冬の副業として始めたのがモヤシ栽培だ。当時は、化学薬品で色を白くしたり殺菌したりするのが当然だった。
大学卒業後、家業を継ぐために戻った社長の中田智洋さん(69)は、従来のやり方をやめようと、一九七三年、何も手を加えない無漂白モヤシの販売を始めた。その後、品質を長く保つためのさまざまな技術を開発、販路を広げた。しかし、九六年の腸管出血性大腸菌O157食中毒による風評でカイワレ大根が打撃を受けた。「安全な野菜が求められていると再認識した」と中田さん。会社を守る策として商品の幅を広げた。
今、力を入れるのが自前の種づくり。スプラウトが有機認証を受けるには、有機栽培された種から発芽させることが必要だ。より安く高品質な商品を届けるため、広大な土地があり、気候も適したアルゼンチンを舞台に挑戦を続けている。
文・写真 小中寿美
スプラウトが広まったきっかけは米国の研究。色素や辛味といった植物の成分、フィトケミカルのうち、ブロッコリーの新芽に含まれるスルフォラファンにがん予防効果があることが報告され、ブームになった。スルフォラファンは発芽の際につくられ、含有量はスプラウトの方が、育ったブロッコリーより多い。
サラダコスモは6月5日、ブロッコリーとケールのスプラウトを、機能性表示食品として全国のスーパーなどで発売する=写真。スルフォラファンを含み、肝機能の数値改善に役立つことを消費者庁に届け出て受理された。いずれも30グラム入りで100円程度。モヤシ以外のスプラウトが機能性表示食品として販売されるのは全国初。
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<食卓ものがたり>安全で健康にいい野菜 スプラウト(岐阜県中津川市) :東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞
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