
◆おいしくなって食品ロスも減る! そもそも、野菜を干すとどんな利点があるのだろうか。 「野菜の成分は90%以上が水分。干すと水分が抜けるので、栄養成分が濃縮されます。また、スクロース、グルコース、フルクトースといった糖やアミノ酸、核酸などの“旨み成分”も濃縮されるため、甘みと旨みが増します」 とは、東京農業大学農学部デザイン農学科教授の谷口亜樹子さんだ(「」内以下同)。 特に、きのこ類を干すとビタミンDや旨み成分のグルタミン酸が増え、風味があがるという。また、水分が抜けた野菜は、生の状態に比べて10分の1程度の量になる。かさが減れば食べられる量が増えるし、皮つきのまま干すことで、普段は食べにくい部分も丸ごと食べられる。そうすれば、結果的により多くの栄養や食物繊維が摂れるというわけだ。さらに生ゴミも減っていいことづくしだ。 ◆日陰で半日干すのがおすすめ 「野菜の細胞は収穫後も生きて呼吸をしているので、何もせずに置いているだけでも、栄養成分や旨み成分は失われていきます。しかし、新鮮なうちに干して、その進行を止めれば、おいしく食べられる期間を延ばせるのです」 とはいえ、注意点も。干しすぎると、野菜の水分に溶けていたビタミンCなどの水溶性ビタミンが分解されて減少したり、β-カロテンなどのプロビタミンAなどが、酸化によって減ってしまう。 貴重な栄養成分を損なわずに旨みをアップさせるには、完全に乾燥させるより、日陰で半日干す程度の“ちょい干し(セミドライ)”がおすすめだという。 ◆きのこや根菜類は干し野菜におすすめ では、どんな野菜を干せばいいのだろうか。 「どんな野菜でも干せます。生ではクセがあるセロリの葉や、古くなり苦味の出たきゅうりも干すと甘くなり、もやしは旨みが増します。でんぷん量が多いかぼちゃやれんこんは、干しても栄養が減りにくい上、甘みも増します」 ただし、トマトやなすのような果菜類(かさいるい)(果実または種実を食用にする野菜)は乾燥に時間がかかる。また、カリフラワーやなすは、ポリフェノールオキシダーゼという酵素の働きで、色が黒くなるので、見た目が気になる場合は、避けた方がいいことも。 「アスパラガスや長ねぎといった茎菜類(けいさいるい)は、水分が抜けると繊維が硬くなって食べにくくなるので、長時間干さない方がいいでしょう。こういった理由でもやはり、“ちょい干し”がおすすめです」 ◆風通しのよい場所なら室内干しもOK 干すときは、栄養を損なわないよう、直射日光よりも日陰がいい。干す時間も半日(7~8時間)か、あるいは短時間(2~3時間)で充分。窓の近くなど、風通しのよい場所であれば、室内に干してもいい。干しザルにガーゼや手拭いを敷いて、その上で干すのがおすすめだが、決まりはないという。ザルがなければ、揚げ物用の網や、新聞紙を一度クシャクシャにしてからのばしたものの上に、キッチンペーパーを敷き、その上で干してもいい。 出かける前に干し、帰宅時に取り入れる。それくらいわずかな時間でもいいので、干しておけば、食感や風味がよくなり、食品ロスも防げる。特にきのこや、さつまいもなどの根菜類、かぼちゃなどの秋野菜は干すのに最適。この機会に挑戦してみませんか? ◆3STEPで簡単!干し野菜の作り方 【1】切る 厚さや切り方は基本的に自由。切り方によって異なる食感が楽しめる。ただし、厚く切りすぎると乾くまでに時間がかかり、カビが生えてしまう恐れも。フルドライにしたい場合は2~3mmの薄切りがおすすめ。かぼちゃは皮ごと干してもいいが、実と皮を分けて干した方が料理に使いやすい。 【2】並べる 野菜が重ならないよう3cm程度の間隔を空けて干す。重なると乾きにくく、そこへカビが生えるので、薄切り野菜でもなるべく、1枚ずつバラバラにして干すのがコツ。また、野菜のかさが減ると網目から落ちてしまうことも。干しかごには布巾や手拭いなどを敷いておき、布ごと取り込もう。 【3】干す ちょい干しは7~8時間、フルドライは2~3日が目安。ただし、日差しが強ければ、2~3時間で充分ちょい干しができる。 「どんな野菜にもベストな干し場所は、風通しのよい日陰です。ですから室内でもかまいません」(谷口さん)。 干し加減で食感も異なるのでいろいろな条件でトライして。 ◆ここだけ気をつければ大丈夫!8つのポイント 【POINT1】フルドライでも放置はNG 2~3日フルドライにする場合も屋外に干しっ放しはNG。風通しがよければ、干すのは室内でもできるので、夜間は室内に入れること。 【POINT2】余り野菜NG。新鮮なうちに干す 余り野菜など、収穫から時間のたったものを干しても、すでに水分や旨み成分が失われているため、新鮮なうちに干すのがおすすめ。 【POINT3】注意!黒と緑はカビです!! 野菜を干すと、表面全体が白くなる。これは乾燥して繊維や糖が出てきたものなので食べても大丈夫。黒や緑の点はカビなので注意。 【POINT4】すぐに食べないなら冷凍室へ 早めに食べ切る方がいいが、ちょい干しなら冷蔵室で1~2日、冷凍室で約1か月保存可能。フルドライは冷蔵室で約2か月保存できる。 【POINT5】大根の皮を上手に干す方法 料理で残った大根の皮も、短冊切りにして干して活用を。皮だけを干す場合は、5mmほどの厚さにむいた方が失敗が少ない。 【POINT6】葉物野菜を上手に干す方法 葉を干すと黄色くなり傷みやすい。特にほうれん草や小松菜は苦味が出るので、茎だけをちょい干しするのがおすすめ。 【POINT7】トマトやかぼちゃを上手に干す方法 トマトやかぼちゃは水分が多い種にカビが生えやすい。種を取ってから干すか、フルドライにはせず、ちょい干しにすること。 【POINT8】えのきたけを上手に干す方法 えのきたけの石づきはカビやすいので、ちょい干しに。傘はフルドライにしても問題ないので、それぞれを切って干し分けよう。 教えてくれた人 谷口亜樹子さん 東京農業大学農学部デザイン農学科教授。著書に『食物と健康の科学シリーズ 米の科学』(朝倉書店)など多数。 取材・文/番匠郁 撮影/髙橋進 ※女性セブン2021年11月25日号
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